21. チェレンコフ望遠鏡とは?

それでは、チェレンコフ望遠鏡の原理を説明しましょう。

アインシュタインの特殊相対性理論が予言していることの一つに、「全ての物質は光速を超えて走ることはできない。光が一番速い。」があります。しかし、これは宇宙空間のような真空に近いところでの話で、水の中では事情は異なります。水中では、宇宙線の方が光より速いのです。宇宙線は水中では、光の服を脱ぎ捨てながら水中を通過するというわけです。しかし、真空中では光の服は脱げません。この光の服がチェレンコフ光と呼ばれるものです。

1999年に茨城県東海村で起きたJCOの臨界事故の時、「青い光を見た」という証言がありましたが、これはチェレンコフ光の青い光です。目で見えたのは、多数の放射線が青い光を出したので、肉眼でも見えたのだろうと言われています。光が大気から水の中に入った時、屈折するのは、光速度が異なるために起こるのです。

新幹線ができた時、光は一番速いので「ひかり」という名前が付きましたが、今は「のぞみ」が一番速いですね。水の中では、「のぞみ」が宇宙線と考えればよいのです。実は宇宙線が大気中を走ると、チェレンコフ光を出します。空気は真空ではないので、空気中を宇宙線が走るとチェレンコフ光を出すのです。チェレンコフ光は、水中では宇宙線の進行方向に対して42°に出ますが、空気中では1°に放出されます。この光をとらえるように工夫された望遠鏡が、チェレンコフ望遠鏡です。望遠鏡の口径は大きく10m位ありますが、光が大気中で1°位のコーンの中に拡がって放出されるので、すばる望遠鏡のような鏡面精度は要りません。