49. なぜ人工衛星から気象レーダで観測するの?
地球温暖化が起こったとして、何が一番困るでしょうか?夏が暑すぎる!農作物が育たない!といったことが考えられますが、何と言っても雨がどうなるかが大きな問題です。私たちが生きて行く上で淡水資源(すなわち雨や雪)は、不可欠です。ですから、雨をしっかり把握することは重要になっています。一方で、大雨になれば土砂崩れや洪水といった大きな災害をもたらすこともあります。
このような地球温暖化の影響については、日本だけの問題ではなく、地球規模の問題であることは周知の事実です。よって、地球規模で降水量(降雨量と降雪量)を把握することが重要です。
そのためには、地球の表面積の7割を占める海洋を含めて地球全体の降水を測るものが必要です。人工衛星が軌道上に登場して以来、地球全体の降水観測の努力は行われてきました。1970年代に静止気象衛星(日本で言えば「ひまわり」シリーズ)を用いた降水量推定、1980年代からはマイクロ波放射計(地球や雨粒から出てくる微弱な電磁波を捉えます)を用いた降水量推定があります。これらは、その観測原理から計測精度には限界があったため、人工衛星からレーダを用いて降水を観測することが期待され、1997年に打ち上げられた熱帯降雨観測衛星(TRMM)に搭載された降雨レーダで実現しました。TRMM衛星の出現により、マイクロ波放射計による降水推定精度も改善されて、現在では1時間ごとの地球全体の降水マップも作られるようになりました。