21.どうして地上では大気は光らないの?

ではなぜオーロラや大気光は地上では光らず、中間圏や熱圏など、大気のてっぺん付近でしか光らないのでしょうか?

これらの光が出るのは、前述したように大気の分子・原子が励起状態から元の状態に戻る時です。大気分子・原子が励起状態になってから光が出るまでの時間は、その状態によって違いますが、たいていの場合、長い時間がかかります。例えば酸素原子の代表的な光である緑の光では、この時間が 1 秒、赤い光では 100 秒もかかります。しかし地上付近では、大気の密度が大きいために、大気の分子どうしの衝突がとても頻繁に起こっており、励起状態の大気は、光を出す前に他の大気分子と衝突して、エネルギーを奪われてしまうのです。従って、大気が非常に薄くなって、他の大気分子との衝突があまり起こらなくなる超高層の高さになってはじめて、大気は光ることができます。

励起から発光までに時間がかかるこれらの発光輝線は、空気を薄くした地上の実験室でも光らせることはほとんどできません。一方、オーロラの中で光る窒素分子イオンの光は、励起されてから光るまでの時間が 0.000001 秒以下と非常に短いので、実験室でも光らせることができます。しかし、実際にはオーロラは地上付近では光りません。これは、宇宙空間から降り込んで励起状態をつくるプラズマは、高さ 90 km よりも上で大気と衝突してしまい、それよりも低い高さに入ってこられないからです。