31.電離圏を津波が伝わる?(大規模伝搬性電離圏擾乱)

磁気嵐などの大規模な電離圏擾乱じょうらんがある時には、高緯度のオーロラ帯から中低緯度に向けて、巨大な津波のような波が電離圏の中を伝わっていくことがあります。これは大規模伝搬性電離圏擾乱じょうらん(Large-Scale Traveling Ionospheric Disturbance -LSTID)と呼ばれています。この波は、宇宙空間からオーロラ帯に高エネルギーのプラズマが降り込むことによって高緯度地方の熱圏が加熱され、暖められた大気から出てくるものです。熱圏の通常の風系を変えてしまうほどの大きな風と温度変化を伴います。

この風や温度の変化によって、大気光の輝度の変化や電離圏の密度・高さの変化など、中低緯度の熱圏・電離圏にさまざまな影響を及ぼします。宇宙空間からやってきたエネルギーが、大気で消費されていく過程の最後の舞台と言えるでしょう。