49.大気のてっぺんは鉱夫のカナリア?

昔、炭坑に入る鉱夫はカナリアをかごに入れて持っていきました。というのも、匂いや色がない有毒ガスが炭坑から吹き出した場合、それまで鳴いていたカナリアが最初に死んでしまうことで、有毒ガスの発生がわかるから。これと同じことが、大気のてっぺんと地球温暖化の間にも言えるでしょう。

16 で述べたように、地球表面の温暖化が進むと、逆に中間圏や熱圏の温度は下がります。実際、1989 年には、米国立大気科学研究所の研究グループが、「温室効果ガスが現在の量の 2 倍になると、中間圏では 10 度、熱圏では 50 度も温度が低くなる」と予想したモデル計算の結果を発表しました。この値は、地上の温暖化による温度上昇よりもはるかに大きいのです。そのため、成層圏や中間圏の温度を長い時間継続して測ることにより、地球の温暖化の状況をより早く知ることができるかもしれません。