30.電離圏がしましまになる?(中規模伝搬性電離圏擾乱)

日本などの中緯度の上空では、電離圏にしましまの波ができて、それが南西に向かって伝わっていく構造が、特に夏の夜間によく見られます。これを中規模伝搬性電離圏擾乱じょうらん(Medium-Scale Traveling Ionospheric Disturbance - MSTID)と呼びます。夏の間ほぼ毎晩観測されること、伝搬方向がほとんど南西向きであることなどの特徴があり、電離圏のプラズマ不安定の一種と考えられていますが、原因はまだよくわかっていません。

名古屋大学宇宙地球環境研究所の研究では、このしましま構造は、実は電離圏内の電場を伴っているものであることが、人工衛星データなどとの比較からわかっています。電場は磁力線を伝わって反対半球まで瞬時に伝わるので、日本とオーストラリアでは、地球の磁力線を介してきれいに対称になったしましま構造が観測されています。

日本列島を南西に向けて横切る電離圏のしましま構造
(地上 5 カ所で同時に撮影された大気光の合成画像)。