32.どうして電離圏には電流が流れているの?

電離圏が発見される前から、上空に電流が流れて磁場変化を起こしていることが予想されていました。地磁気が 1 日の間に決まった変化をするからです。この電流は電離層電流と呼ばれていて、電離圏の中の電気を帯びた電子やイオンが動くことによって流れています。7 や 8 で述べた熱圏における大気潮汐ちょうせきなどの中性大気の変化が、プラズマを押し動かすことによって電流が流れるのです。

また、高緯度の電離圏では、宇宙空間からプラズマが降り注ぎ、オーロラを起こすと共に強い電離層電流(オーロラジェット電流) を流します。赤道域では電離圏の電子密度が増大しているので、大きい電離層電流が狭い範囲にわたって流れていることがわかっています。

特に極域のオーロラジェット電流は、磁気嵐の際には非常に強くなります。そして電流の変動にともなって、地上や送電線に誘導電流が流れ、発電所の機械が壊されたりすることもあります。しかし中低緯度の電離層電流は、極域の電流の 100 分の 1 程度であり、通常時はそういったことは起こりません。

オーロラの活動が低い時の、極域の電離層電流パターンの例。隣り合う電流間に、1万アンペアの電流が流れています。