11. 放射線帯の存在は予言されていた?

地球は巨大な磁石。地球磁気圏の中での荷電粒子(電気を帯びた粒子)の運動は、ステルマーと呼ばれる学者によって計算されました。20 世紀初めのことです。荷電粒子は磁気圏の中でたいへん複雑な動きをするため、その運動を求めるにはたくさんの計算が必要ですが、当時は、コンピュータはもちろん電卓だってありません。ステルマーは約 30 年もかけて、さまざまなパターンについて磁気圏中の荷電粒子の運動をまとめました。そして、磁気圏の外からエネルギーの高い粒子がやってくるとき、ある距離以上になると、地球には近づけないことを発見しました。また、この距離よりも地球に近いところにいる粒子は、永久に地球の磁気圏内に捕らえられてしまうことも明らかにしました。この捕捉領域が、放射線帯に対応するのです。

ステルマーの功績により、荷電粒子が安定に存在する領域が地球の近くにあることは、理論的にわかっていました。しかし、捕捉領域に荷電粒子を注入するメカニズムがわかっていなかったため、本当に粒子が捕らえられているかどうかも不明だったというわけです。