49. 木星の放射線帯はどうなっている?

木星はこれまで、パイオニア 10、11 号、ボイジャー 1、2 号、ユリシーズ、ガリレオ、カッシーニの 7つの探査機によって観測が行われ、磁気圏の様子が調べられてきました。一般に木星の放射線帯という場合には、木星半径の 20 倍程度よりも内側を指します。また、木星半径の 6 倍よりも内側を内部放射線帯と呼ぶこともあります。

木星磁気圏と他の惑星の磁気圏の比較。

木星の磁気圏には、地球の磁気圏と大きく異なる点があります。 それは、エネルギーの高い粒子が、木星に近い場所だけではなく、 磁気圏のあらゆるところに存在しているということ。通常は、磁気圏の外側では磁場が弱いため、高エネルギー粒子はほぼ存在しないだろうとされています。ではなぜ、木星の場合には、あらゆるところに高エネルギー粒子が存在しているのでしょうか?これはまだ解決されていない重要な問題です。

木星は地球とは異なり、複数の月やリングを持っていますが、 その周辺では放射線帯粒子は少なくなっているというのも特徴的です。月やリングに衝突して失われたというのが、その原因として考えられています。

さらに、エネルギーが数百 MeV にも達する火山性イオンが見つかっていることも、木星の磁気圏の大きな特徴です。木星の月イオには火山があり、イオからは、硫黄や酸素といった重い火山性イオンが、磁気圏に大量に放出されているためです。しかし、 これらの火山性ガスはもともとのエネルギーがとても低いため、 どのようなメカニズムによって数百MeVにまで加速されるのかについては、謎が残っています。

さて、43では、地球の放射線帯は残念ながら目で見ることはできません…と説明しました。それでは、木星の場合は?実は、木星の放射線帯の電子からは、「シンクロトロン電波」と呼ばれる電波が放射されています。シンクロトロン電波は、電子が磁場のまわりを回るサイクロトロン運動(14)をしているときに出される電波。磁場が強いところで、エネルギーの高い電子から、強く電波が放射されます。

電波干渉計による木星シンクロトロン電波の 2次元図。放射線帯の電子がどのように存在しているかがわかります。

木星のシンクロトロン電波は、地球から観測することができます。たくさんの電波望遠鏡を組み合わせる「電波干渉計」という手法によって、どのあたりで電波が強いか、つまり、どのあたりに木星放射線帯の電子がたくさんあるのかがわかるのです。地球の放射線帯が発見されたのとほぼ同じ頃に、電波望遠鏡の観測により、木星からのシンクロトロン電波が発見され、放射線帯の存在が明らかになりました。地球の放射線帯の電子からもシンクロトロン電波は出ていますが、強度が非常に弱いために検出するのは難しいでしょう。

シンクロトロン電波は、惑星の放射線帯からだけではなく、「かに星雲」を始め、宇宙に存在する磁場を持つ天体から、よく観測されています。惑星や天体の磁気圏を研究する上で、シンクロトロン電波の観測はとても重要です。