21. 放射線帯の領域には、ほかにどんな粒子の仲間がいる?

放射線帯のある内部磁気圏(磁気圏の中で、静止軌道よりも地球に近いところ)には、放射線帯以外にも、エネルギーの異なる粒子たちが存在しています。一番エネルギーの低いのは、プラズマ圏と呼ばれる領域。わずか数 eV 以下の“冷たい”プラズマからできている、地球磁気圏で最も低エネルギーであり、最も密度の高い領域です。プラズマ圏は、地球の大気が磁気圏にわきだすことでできています。

主に数十 keV の“熱い”イオン、電子で構成される、環電流*と呼ばれる粒子群もあります。環電流は、磁気圏の夜側のプラズマシートと呼ばれる領域から、内部磁気圏にプラズマが注入されることで形成され、特に磁気嵐のときに発達します。磁気嵐のときには、地球上の磁場が数日にわたって減少しますが、この減少をひき起こしているのが環電流です。

太陽風・地球磁気圏の模式図(カラーページ参照)。

放射線帯の存在する領域には、数eV のプラズマ圏から数十MeV の放射線帯まで、エネルギーが 6 桁以上も違うプラズマ、粒子が同時に存在していることになります。これまで、放射線帯の高エネルギー粒子の変動は、プラズマ圏や環電流を構成する比較的エネルギーが低いプラズマや粒子の変動とは、独立なものと考えられてきました。しかし最新の研究からは、放射線帯のふるまいは、プラズマ圏や環電流の変動と、密接に相互作用している可能性があることが指摘されています。

磁気圏で最高のエネルギーと最低のエネルギーの粒子とプラズマが共存し、お互いに相互作用しあっている、ダイナミックな領域が内部磁気圏だといえるでしょう。

*環電流: 地球のまわりをリング状に取り囲んでいる電流のことで、リングカレントとも呼ばれます。磁気嵐のときには、特に強い環電流が流れます。