45. 日本の衛星も放射線帯を調べている?

宇宙の探査は、アメリカやヨーロッパ、ロシアだけが行ってき たわけではありません。日本も1970年代後半から、科学衛星による磁気圏の探査を続けています。1978年に打ち上げられた「じきけん」衛星の軌道は、放射線帯を横切るものでしたが、残念ながら高エネルギー粒子の計測は行いませんでした。その代わりに、プラズマ圏やそこに存在するプラズマ波動について、詳細な観測を行いました。

1989 年に打ち上げられ、2015 年まで運用された極軌道衛星「あけぼの」は、主な目的であるオーロラ領域の観測だけではなく、内部磁気圏においても多くの発見をしました。また、単独の衛星としては初めて、太陽活動の全周期にわたる放射線帯の変動を明らかにしています。

ジオスペース探査衛星あらせ (ERG) の想像図。(カラーページ参照)

2002 年に打ち上げられた「つばさ」衛星は、人工衛星に使われる部品が放射線帯中でどのような影響を受けるかを調べるため に、内部磁気圏の赤道面での粒子観測を行いました。

放射線帯を解明するためには、赤道面において、放射線帯の粒子だけではなく、もっとエネルギーの低い粒子や、磁場やプラズマ波動など、プラズマ環境を総合的に観測する必要があります。

2012 年、米国は Van Allen Probes という 2 機の人工衛星を打ち上げ、放射線帯の精力的な観測を行っています。そして、日本でも 2016 年 12 月 20 日に「あらせ」(ERG) と呼ばれる新しい科学衛星を打ち上げ、プラズマの波がどのように電子やイオンと相互作用しているか、そしてその結果、電子やイオンがどのように増えたり減ったりするかを調べています。