16. 太陽からも放射線がやってきているの?
大きい太陽フレアや速いCMEで加速された荷電粒子は、地球や人工衛星に降りかかってくることがあります。つまり、フレアやCMEは自然界の粒子加速器になっているのです。これらの荷電粒子は、太陽高エネルギー粒子SEP(Solar Energetic Particle)と呼ばれています。特に、高いエネルギーをもつ陽子(プロトン)が増える現象は、プロトンイベントと呼ばれています。SEPはエネルギーが高いため、地球磁気圏の磁気バリアを破って、地球の磁気圏の内側にも侵入します。
SEPの中でも、宇宙線に匹敵するほどの高いエネルギーを持つ粒子は大気の深いところまで落ちてきて、地面まで届く空気シャワーをおこします。空気シャワーでは中性子やミューオンが飛び散ります。それらの粒子が地上に設置した中性子モニターやミューオン望遠鏡で観測されるほどの強いプロトンイベントは、GLE(Ground Level Enhancement)と呼ばれています。平均すると1年に1回くらいのめずらしいイベントですが、そのときに高い高度を飛行しているパイロットは1時間で1年分の被ばくをしてしまう危険性があります。これらの被害を抑えるための研究が、日本では放射線医学総合研究所や日本原子力研究開発機構などで進んでいます。