23. 飛行機に乗っても被ばくするの?

宇宙放射線による被ばくは、宇宙飛行士だけではありません。高い高度を飛行する飛行機に乗っても、宇宙放射線によって被ばくします。ただし、大気に守られている分、被ばく量は宇宙飛行士よりもずいぶん少なくなります。実際、宇宙放射線被ばくによる飛行機の乗務員の健康への影響が心配され、2005年9月には乗務員に対する放射線被ばく量の基準がつくられました。宇宙放射線の強度は、高度が高くなるほど強くなります。飛行機が飛ぶ高度10kmでは、地上の約100倍の強さです。日本からヨーロッパへ飛行機で一回往復すると、0.1から0.2mSvほど被ばくします。普段の生活では年間2.4mSvほどの放射線を自然界から受けていますから、これが何%増える程度です。ただし、太陽フレアが発生すると、数時間のうちに被ばく量が大きく増加することがあります。その被ばく線量は、最大級のものになると、飛行機の乗務員が1年間に許容される被ばく線量に匹敵します。日本における乗務員の被ばく管理目標値は、1年間に5mSvですが。太陽フレアの影響をのぞいた場合に、飛行機に乗ったときに自分がどれくらい放射線を浴びたかは、日本の放射線医学研究所で開発されているJISCARDというソフトウェアで計算できます。

測定データの存在する1940年代以降では、1956年2月23日のGLE(第16問参照)が、過去最大の太陽放射線を地球にもたらしたと推定されています。このとき、アメリカとヨーロッパの間の飛行機で受けた放射線量の最大値は4.5mSvと見積もられています。GLEは平均すると1年に1回くらいおきるめずらしいイベントです。また、1回の飛行で1mSvを超えるような被ばくを受け得るようなGLEは、上の1956年のイベントの後はおきていません。GLEの発生が分かった時点で、飛行機の太陽放射線被ばくの影響を抑えるための対応ができるような宇宙天気予報の研究が進められています。

日本では、WASAVIESというソフトウェアで被ばく量の推定ができるようになりつつあります。