9. 地上にも宇宙から放射線がふっている?

ジオスペースでは、放射線帯の粒子以外にも、目に見えないエネルギーの高い粒子が飛びまわっています。このエネルギーの高い粒子は太陽系の外からやってきて、光やX線のように直進し、透過力が強いため宇宙線と呼ばれています。宇宙線の主な起源は、天の川銀河のどこかで100年に一度くらいの割合で発生している超新星の爆発によって加速された粒子だと考えられています。ジオスペースは無色透明の「宇宙線の雨」にいつもさらされているのです。まさに宇宙天気ですね。1927年にノーベル賞を受賞したウィルソンが、宇宙線を目で見るための霧箱実験をしたことは有名な話です。

太陽風には複雑な磁場が含まれているために、宇宙線がまっすぐに飛んでくるのを妨げる働きをしています。つまり、宇宙線がやってくるのを防ぐバリアの働きがあるのです。

第1の磁気バリアである太陽風、第2の磁気バリアである地磁気を通り越し、とうとう地球の大気まで突入してきた宇宙線は空気中で原子核反応をおこし、口絵にもあるように次々に他の粒子を生み出します。空気シャワーと呼ばれる現象です。こうして地球の大気は生命を宇宙線から守る第3のバリアとして役立っています。空気シャワーを引きおこす宇宙線のエネルギーは、放射線帯粒子のエネルギーの1000倍以上にもなるものがありますが、エネルギーの高い粒子ほど数はずっと少なくなります。いままで観測された一番高いエネルギーの宇宙線はどのくらいでしょう?実は、目に見えないほど小さい原子核一粒が、バシッと打ったテニスボールほどのエネルギーを持っているのです。

極端に数が少ない超高エネルギー宇宙線を検知するために、地球全体をひとつの宇宙線観測器として使ってみようという壮大な計画があります。宇宙ステーションに特殊な望遠鏡を搭載して、空気シャワーの光を捉えるのです。天から地を見て天を知るという意味で「地文台」と呼ばれています。将来、とても高いエネルギーを持つ宇宙線が見つかるかもしれませんよ。