5. 太陽から風が吹いているのはなぜ?

宇宙空間は真空ではなくて、「風」が吹いていると考えられはじめたのは、1950年よりも後のことになります。1951年、彗星の尾のたなびき方を調べたドイツの科学者ビヤマンは、太陽から何かが流れていることを発見しました。そして1958年、その何かが「太陽から超音速で流れ出している電気を帯びたガス(プラズマ)」であることを、アメリカのパーカーが理論的に予言しました。「太陽風」の名づけ親です。4年後の1962年には、金星に向けて打ち上げられた「マリナー2号」探査機による観測で、その予言が正しかったことが証明されました。

皆既日食のときに、太陽のまわりにぼんやりと見られる光は、太陽コロナと呼ばれています。太陽コロナは100万度を超える高温になっているため、水素原子のガスは陽子と電子に分解して、プラズマと呼ばれる電離気体になっています。このプラズマは、高温であるため太陽の重力を振り切って太陽のまわりから外の宇宙空間に向けて常にものすごい勢いで吹き出しています。これが太陽風の正体です。

2009年7月22日に日本で観測された皆既日食(国立天文台提供)。

太陽風のスピードは超高速で、時速100万km以上になっています。その量も莫大で、1秒あたり100万tものプラズマがいつも吹き出しています。ただし、吹き流れる宇宙空間も広大ですから、普通の風に比べると希薄です。太陽風の密度は1立方cmあたり陽子が10個程度で、実はほとんど真空です。また、太陽風は太陽の磁場をプラズマといっしょに外側に引っ張り出してくるため、磁気を帯びています。つまり、太陽風の性質を一言でまとめると、磁気を帯びた超高速の希薄なプラズマ流、ということになります。