26. カーナビが使えなくなるのはなぜ?

電離圏嵐は、通信や電波伝搬、GPSシステムなどに影響を及ぼします。GPSでは、複数の衛星からの電波の到来時間の差を使って位置を決定しますが、電離圏嵐に伴って電離圏の電子密度が大きく変化すると、位置の測定誤差が大きくなります。また、電離圏中でプラズマの泡構造(プラズマバブルと呼ばれます)が発生したときにも、電子密度が変化するためにGPSの測定に影響がでます。GPSは、カーナビや航空機の航法に欠かせない技術となっていて、位置の誤差は大きな問題となります。したがって、電離圏嵐がいつ、どこで発生し、そのときの電子密度の変化量がどのくらいかを予報する研究が重要となります(*)。

また、デリンジャー現象が発生したときには、電離圏のD領域(高度60-90km)で短波帯の電波が吸収されるために、電離圏E領域(高度100-120km)やF領域(高度150-800km)を使った通信もできなくなるのです。

一方、第18問でも述べたように、極冠吸収がおこったときにもデリンジャー現象と同様の通信障害が発生します。日本からヨーロッパに向かう航空機は高緯度地域を通過することが多く、極冠吸収は大きな問題となっています。大規模な極冠吸収がおきると飛行機の通信を確保するために、航路を低緯度側に変更することも行われています。

(*)カーナビはGPSの情報以外にも地上の基地局の情報などを使って、位置をわりだしています。