19. 太陽から電波がやってくるのはなぜ?

太陽からは、太陽風やCMEのようにプラズマが噴き出していることはわかりましたが、目には見えない電波も大量に出ています。なぜ太陽から電波がやってくるのでしょうか。ひとつは磁場の存在です。強い磁場のまわりにとらわれている電子からは電波が放射されているのです。波長10.7cmの太陽電波の強度は、太陽からの紫外線量とよく相関することが知られていて、F10.7指数として太陽黒点とともに太陽活動の指標にもなっています。

また、太陽フレアやCMEに伴って、電波バーストと呼ばれる電波の強度が増大する現象がおこります。こういった電波は、フレアに伴う粒子加速領域や、CMEに伴う衝撃波付近で、プラズマの不安定性によって発生していると考えられており、フレアやCMEのメカニズムの研究には欠かせないものとなっています。また、電波は光の速さで進むため、宇宙嵐がおきたときに真っ先に地球に伝わってきます。そのため、電波バーストは磁気嵐や電離圏嵐の前兆現象として、人工衛星観測がなかった時代から活用されてきました。また、光の観測と違って、太陽電波観測は天候に左右されないという利点もあります。日本では、情報通信研究機構や国立天文台によって、太陽電波の連続観測が行われています。

太陽電波バーストはそのエネルギーが少ないので、通信や電波伝搬に対して直接的な影響は少ないと考えられてきました。しかし、2006年12月6日におきた太陽フレアに伴って、かつてない強度の太陽電波バーストが発生し、その電波が原因でGPS衛星の電波が正しく受信できないという障害が報告されました。そのため、太陽電波バーストを宇宙嵐の前兆現象として監視するだけではなく、電波バーストが通信に及ぼす影響についての関心も高まってきています。