29. ハトやイルカが迷子になるのはなぜ?

磁気嵐がおきているときには、磁気圏の中に地球を取り囲むように環状に強い電流が流れています。この電流は、環電流と呼ばれており、最大級の磁気嵐になると、地上の磁場強度を1%ほど弱めます(第12問参照)。逆にこのことを利用すれば、地上の磁場観測から宇宙嵐の発生を知ることができます。京都大学が公開しているDst指数も、環電流を測定するために低緯度域に配置した高感度の磁力計のデータを使って計算されたものです。

ハトやイルカなどの動物は、地球の磁場を敏感に感じることができて、磁場を利用して長距離にわたる行動針路を決めているのではないかといわれています。こういった動物は、1%程度の磁場の変化にも敏感で、磁気嵐によって地上の磁場が変化してしまうと針路を見誤ってしまうようです。実際、ある年に行われた伝書ハトレースのときに磁気嵐が発生し、多くのハトが迷子になってしまって戻ってこなかったという記録があります。原始的なハトのレースを行う前に、ハイテクな宇宙天気予報を確認する必要があるなんて、とても面白いですね。