36. 宇宙天気が11年で繰り返すのはなぜ?

太陽黒点の数は、約11年ごとに増えたり減ったりをくりかえします。宇宙嵐の主な原因は黒点です。黒点の数が増えてピークになったときを太陽活動極大期と呼び、太陽フレアや大きな磁気嵐がおきやすくなります。逆に、黒点の数が減る太陽活動下降期には、コロナホールが大きく広がり、太陽風のスピードが上がります。

望遠鏡が発明され、まだ太陽黒点の観測が始まったばかりの17世紀には太陽黒点が何十年も出てこない期間があったことを、グリニッジ天文台のマウンダーが発見しました。このように太陽活動が何十年も弱くなる時期は、グランドミニマムと呼ばれています。これまでの研究でグランドミニマムは数百年間隔で発生することがわかっていて、17世紀のグランドミニマムは「マウンダーミニマム」と呼ばれています。

このような100年スケールの太陽活動の変化は、地球の気温の変化と相関があることも知られています。そして太陽活動の長期的な変化は、気温の変化を通して、人類の歴史にも大きな影響を与えてきた可能性があります。実際、マウンダーミニマムの時には、とても寒い時期が長く続いたため、ロンドンのテムズ川も凍ってしまったという記録が残っています(第50問の口絵参照)。太陽活動の11年周期と気候変動の関係性については、地球大気がもつ複雑な性質との切り分けが難しいため、世界中で最先端の研究が行われています。地球温暖化を正しく予測するためにも、太陽活動による影響を理解することはとても大切なことだと考えられています。

地震で地球の内部を調べるやり方と同じ原理で、日震という現象を使って、太陽の内部を調べることができます。11 年周期を作り出す太陽ダイナモの仕組みの解明は宇宙天気最大の難問のひとつですが、この日震学で太陽内部の状態を調べることが手がかりになると考えられています。また、内部だけでなく、地球から見て太陽の裏側の太陽活動もわかるため、日震学は宇宙天気予報にも役立っています。

太陽黒点数の11年周期。数字は太陽活動周期の番号で、現在はサイクル24などと呼ばれる。Hoyt and Schatten(1998)のデータとNASAのデータを参考に作成。

SOHO衛星がとらえた1太陽活動周期での各年の太陽の変化。1年ごとに太陽が変化していることがわかります(NASA/ESA提供)。