24. 宇宙の放射線で人工衛星はこわれないの?
ジオスペースに存在するエネルギーの高い粒子は、人工衛星に様々な影響を引きおこします。放射線帯やオーロラの電子が人工衛星にぶつかると、衛星に帯電をおこしてしまいます。衛星の帯電がおきると、衛星の場所によっては数百Vから千Vという大きな電圧が生じ、放電によって火花がでます。このような事故はたびたびおこっており、2003年10月に発生した地球観測衛星「みどりII」の事故もこれが原因と考えられているそうです(口絵参照)。ちなみに、宇宙ステーションがドッキングする際にも、同じ原理で火花が散るそうです。
太陽プロトンなどのエネルギーの高い粒子が人工衛星のコンピューターにぶつかると、ビット反転とよばれる現象がおこります。ビット反転がおきると、衛星は、コンピューターからのにせの信号をうけて誤作動をおこしてしまいます。このため、太陽プロトンイベントが発生した場合には、人工衛星が誤作動することもあるのです。また、人工衛星のエネルギー源として使われている太陽電池パネルは、放射線を浴びると劣化してしまいます。長期間運用される衛星は、放射線帯や太陽プロトンの影響を受けて太陽電池の効率が下がってしまい、衛星の活動に必要な電力を十分に供給することができなくなります。
"このように宇宙放射線は、"人工衛星の運用にとってやっかいものです。しかし事前にいつ宇宙放射線が増加するかがわかっていれば、たとえば衛星の電源を切るといった対策を講じることによって、衛星全体に生じる被害を回避することも可能です。そのため、太陽プロトンや放射線帯粒子変動の予報を目指して、世界各国で研究が進められています。