28. オーロラがおきると停電することがあるのはなぜ?

現在の私達の生活はあらゆる面で電力に依存しています。1989年3月13日の真夜中、カナダのケベック州では、大磁気嵐や激しいオーロラ活動の影響でハイドロケベック社の電力系のすべてが停止しました。停電は9時間も続き、のべ600万人に影響が出ました。その原因は、地磁気誘導電流(第20問参照)によって送電網の変圧器が壊れたためでした。現在のアメリカの電力システムにおいて、過去最大級の磁気嵐が再び発生した場合には、非常に大規模な停電がおきて深刻な災害に発展することも予想されています。NASAやNOAA(米国海洋大気局)では、このような磁気嵐に伴う事故を未然に防ぐための宇宙天気予報研究が進んでいます。日本は磁気緯度が低いため、地磁気誘導電流による大規模な停電などがおきる可能性は低いと考えられています。

地磁気誘導電流は、海底ケーブルやパイプラインにも影響があることが知られており、ロシアやカナダなどの高緯度の国々では、電車の信号の誤動作や通信障害を引きおこして、電車の運行に影響を及ぼすといわれています。巨大磁気嵐中の1986年2月8日には、カナディアンロッキーで鉄道史上最悪の正面衝突事故が発生し、23人の死者と多数の負傷者が出ました。この事故の原因の可能性としても、オーロラと磁気嵐が考えられています。