21. 氷床のボーリングで何がわかる?

ボーリングといっても氷の上にピンを並べてボールで倒すわけではありません。地質調査のために細く深い穴をほることをボーリングと言います。英語で書くと、前者は bowling、後者は boring です。15. で南極氷床の深さは平均 2450 メートルで最も深いところで 4000 メートルと書きました。氷床は長い年月をかけて南極に降り積もった雪が押しつぶされて氷に変わっていったものです。深いところの氷ほど昔に降った雪からできています。そのため、ボーリングで深いところの氷を掘り出して分析すれば、そのもとになった雪が降った時代の様子(気候や環境) を知ることができます。

南極では、1968 年にアメリカのバード基地で 2164 メートルの掘削に成功しました。その後、各国が共同で掘削の記録を更新していきました。日本では内陸の「ドームふじ」観測拠点で1996 年に 2503 メートルの氷床掘削に成功し、2004 年から開始された第2次ドーム計画では最終的に 3035 メートルまでの掘削に成功しました。これにより、過去 72 万年におよぶ氷のサンプルを得ることができました。

氷の資料は、円柱状の形をした雪氷コアとして保存されます。雪氷コアに含まれる水分子の酸素同位体の比率から過去の気温を推定することができます。また、水蒸気以外の大気中の成分や火山灰やダストなどの微粒子から火山活動の様子や砂漠などの乾燥地域の状況やダストを運ぶ風の状況などの過去の地球の環境を知ることもできます。さらに過去の地球の周りの磁場の変動や宇宙で起きた超新星爆発の痕跡も見つかる可能性があります。まさに雪氷コアは天然のタイムカプセルです。