30.北極と南極とでは同じオーロラが同時に見える?

オーロラの源であるエネルギーを持った粒子は、主に、電子です。電子は南極から北極へ向かう磁力線では、まるで朝顔のつるのように、右回りに巻きつきながら行ったり来たりしながら降りてきて、電離圏の酸素原子や窒素分子と衝突して光を放ちます。北極と南極の電離圏で光るオーロラを、地上から見ると、北極では左周り、南極では右周りの渦状のオーロラになります。つまり、北極と南極とで同じオーロラが同時に見られることは原理的に可能です。

しかし、実際には、磁力線の磁場強度は時々刻々と変動します。したがって、1本の磁力線で結ばれた北極と南極の点(磁気共役点と呼びます)は、いつも同じ場所ではないので、オーロラの現れる場所も移動するのです。つまり、地上に固定されている1観測点からみると、オーロラの見える方向や距離が変わるので、同じオーロラを見る機会は少なくなります。同じ渦上の構造が現れても、南北の磁気共役点でオーロラがアーク状やバンド状に見えたり、時には、一方の観測点だけで線状の構造が目立ったりします。また、南北の磁気共役点では、同時に暗くなる極夜の期間が春分・秋分の近くでしかありません。この条件も北半球と南半球で同じオーロラを同時に見える機会を少なくしています。