46. 南極で燃料は凍らないの?

南極では、ウィンター軽油(通称:W軽)、南極用低温燃料(通称:南軽)、レギュラーガソリン、そして航空燃料(JP-5やJET-A1)の4種類が使われています。日本の基地がある昭和基地における最低気温の記録は1982年9月4日の「−45.3度」ですが、ガソリンと航空燃料の凝固点はそれよりも低く、真冬でも凍ることはありません。しかし、問題なのは軽油です。軽油にはワックス成分が含まれていて、低温になるとそれが固まって軽油の流動性が低下してしまいます。昭和基地で主に使われているW軽(ダブケイ)は、冬期の北海道で販売されている−30℃まで凍らない寒冷地用の軽油とほぼ同じです。また、厳冬期の昭和基地ではW軽では凍ってしまうこともあるので、冬期には-60℃でも凍らない南軽(ナンケイ)が使われます。そして、ドームふじ基地等への内陸旅行へは南軽が不可欠です。

南極観測で使用する燃料は、南極観測船「しらせ」を使って毎年輸送されています。毎年約1,000トン以上の物資を昭和基地へと運んでいますが、総重量の半分以上は燃料が占めています。「しらせ」が昭和基地に到着すると、昭和基地の貯油タンクと「しらせ」を送油ホースで結び燃料を3日3晩かけて送油しています。

南極用低温燃料(上)と昭和基地の貯油タンク(下)。タンクにかかれたWの文字はW軽を示す。 提供:国立極地研究所 平沢尚彦氏