50.温暖化は政治的な問題?科学的な問題?

この冊子でみてきたように、地球温暖化は科学と政治の両側面を持った問題です。現状をきちんと分析し、将来をできるだけいい精度で予測することは科学の問題です。科学は予測しますが、対策はたてられません。たとえば、「台風が来るぞ」といったとき、外出を控えるとか、庭にころがっているバケツをしまう、といった個人的な対策は、科学的予測で呼び起こすことができます。しかし、川が決壊するのを避けるために土のうを積むとか、危ないときに避難を促すなど、複数の人間(=社会)を相手にした対策は、政治とは切り離せない問題です。温暖化は全地球的な問題ですから、地球上にあるすべての国々が、加害者にもなり、被害者にもなりうる、国際的な政治問題でもあります。

ただ大事なことは、科学者が出した研究結果・予測の中で、政治家や特定の国が都合のよいところだけを切り取って、自分の有利な方へ話をすすめないように、目を光らせることです。そのためには、私たち一人一人が科学者の言うことを理解しようとし、政治家の言っていることが正しいかどうか考えなければなりません。また、科学者も、一般の人が理解しやすいよう、わかりやすく話しをする必要があります。この本がきっかけとなり、皆さんがこれから、温暖化問題を自分たちの問題として理解し、考えるようになってくれれば、幸いです。

宇宙地球環境研究所で実験を進めている、小型FTIR(フーリエ変換型赤外分光計) を用いた大気CO2測定システム。