6. 天体を引き裂く力?

潮の満ち引きは、月の潮汐力によって起きると言われています。これは、どんな力でしょうか?「それって、万有引力のことでしょう。」と言う方もいるかもしれません。しかし、万有引力は「引く力」です。海水が月の方に引かれて満潮になるのはわかりますが、実際には月と反対側も満潮になります。しかも、地球に及ぼす万有引力は、月より太陽の方がずっと大きいので、万有引力が原因ならば、正午頃に満潮になるはずです。

実は、月の公転に伴って、地球も月と地球の重心の周りをまわっています。この公転による遠心力と月の引力は、地球全体ではちょうど釣り合っています。一方、月の引力の強さは場所によって違います。月に近い側では引力は強く、遠い側では弱くなります。そのため、地球には月の側では月の引力が勝り月の方向へ、反対側では遠心力が勝って月の反対方向へと引き裂く様な力が働きます。これが、潮汐力です。引力は引っ張る力、潮汐力は引き裂く力です。

月の様に地球からの距離が近いと、距離による引力の変化率が大きくなって、潮汐力が強く働きます。しかし、太陽の様に距離が遠くなると、近い側も遠い側も引力はあまり違わなくなるので、潮汐力は弱くなります。万有引力が距離の2乗に反比例するのに対して、潮汐力は距離の3乗に反比例します。このため、地球に及ぼす引力は太陽の方が大きいにもかかわらず、潮の満ち引きは主として月の潮汐力で起こります。

こうした潮汐力は、惑星や衛星の変形を引き起こし、潮の満ち引き以外にも様々な影響があります。天体にはたらく潮汐力が、非常に大きくなると、その天体は引き裂かれてばらばらになってしまいます。あの土星の環も、衛星またはほかの小天体が土星の潮汐力でばらばらに破壊され、その破片でできているとされています。