10. 海洋の深層循環ってなに?

海洋の深層(水深1000mから4000mにかけての範囲)では約2000年かけて世界の海を一周する非常にゆっくりとした循環があります。この深層循環は下図のようにグリーンランド沖を出発点として大西洋の赤道を越えて南大洋に向かうように流れた後に太平洋やインド洋に広がっていきます。なぜ深層循環が大西洋のグリーンランド沖から出発するのでしょうか?大西洋の海水には多くの塩が含まれます(#9 参照)。メキシコ湾流(アメリカのフロリダ沖から北に向かう強い海流)が塩辛くて温かい大西洋の水をグリーンランド沖まで運ぶと、その海水は大気からの冷却によって冷たくなります。この塩辛く冷たいというのは、海水の密度が高く(重く)なるために最適な条件です。興味深いことに、大気による冷却がさらに進むと海面では氷が作られますが、氷の中に塩は含まれません。そのぶん氷の下の海水は多くの塩を含むようになります。このようにグリーンランド沖では、海水の密度が高くなる(重くなる)ための条件が整っているのですが、太平洋やインド洋では海水があまり塩辛くないために深層への海水の沈み込みが起きないのです。