29. 石灰化生物ってなに?

海には、溶けているCO2とカルシウムを使って、炭酸カルシウムの骨格や殻を作る生き物が数多くいます。これらは「石灰化生物」と呼ばれていて、貝やエビ・カニ、サンゴもその仲間です。また円石藻や有孔ゆうこうちゅうなどの小さなプランクトンも硬い殻におおわれています。このような構造は、軟らかい体を支えたり、敵から身を護ったりするのに役立ちます。光合成を行う円石藻の殻には光を集める機能もあります。この殻や骨格の一部は、生物自体が死んでしまった後も分解されずに海底にたまり、長い年月をかけて石灰岩になります。陸上にある石灰岩の地層の多くも、もともとは大昔の海の生物の殻だったのです。とくに有名なのは、イギリスのドーバー海峡に面した「白い崖」で、これも肉眼では見えない小さなプランクトンの化石がぎゅっと集まってできています。このような海の生物による石灰化は数十億年前から行われていて、温室効果のあるCO2を岩石に閉じ込めることで、今よりもずっと高かった大気CO2濃度を下げてきたのです。小さな石灰化生物が、過去の地球の気温を左右したほど大きな影響力をもっているのです。