20. 海洋にも渦があるの?

地球上を巡る大気と海洋の流れはとても大きな渦を作り出します。大気の渦は日本周辺の天気図でよく目にするような高気圧や低気圧のことですが、その直径は500kmくらいです。海洋の渦は黒潮などの海流が蛇行することによって作られますが、その直径は50kmくらいです。大気と海洋では渦の大きさが10倍も違うのは不思議ですね。日本周辺の緯度で考えた場合、地球の回転の効果は大気も海洋も同じですから、密度の鉛直構造が大気と海洋で少しだけ異なることによって、渦の大きさの違いが生じています。大気では1kmくらいの高度差があると上側の空気と下側の空気では20%くらいの密度差があります。海洋では1kmの深度差があると上側の海水と下側の海水では0.2%くらいの密度差があります。つまり大気の方が海洋より100倍強く成層しているのです。成層というのは密度の高い流体の上に密度の低い流体が積み重なっている状態のことです。渦の大きさは密度差の平方根に比例する物理法則があるので、その結果、海洋の渦は大気の渦に比べて直径が10分の1になっています。人工衛星から海面水温や海面高度を測定すると、水温が高く海面が盛り上がっている海域は高気圧性(北半球では時計まわり)の渦、水温が低く海面が凹んでいる海域は低気圧性(北半球では反時計回り)の渦になっています。