18. 中層フロートってなに?

地球上の海洋の全熱容量は大気の全熱容量の約1000倍あります。例えば地球上の大気を平均1℃温めるための熱を海洋に与えても、海水は平均1000分の1℃しか温まりません。地球温暖化の問題だけでなく、海洋中の物質循環を理解するためには、海洋の内部構造(水温や塩分の分布)を測定する必要があります。これらの情報を得るために、観測船からワイヤーで測器をおろしたり、係留ブイ(海面の浮体と海底のアンカーをワイヤーでつないだもの)を使ったりして、水温や塩分を測定します。

世界の海をくまなく観測するのは大変なので、1990 年代から中層フロートと呼ばれる自動漂流型の測器が使われるようになりました。中層フロートは浮力調整機能がついており、水深1000mを漂うように設定されています。そして10日に一回だけ海面に昇ってきて、人工衛星に自分の位置と水温と塩分の測定結果を報告します。現在では約4000台の中層フロートが世界各地の海で活動しています。この観測結果により、地球温暖化による水温の上昇がどのくらいの深さまで分布しているのか?冬季の大気からの冷却や強風によって発達した海洋混合層がどのくらい深くなっているのか?黒潮やメキシコ湾流のような強い流れがどのくらいの深さまで続いているのか? が常時わかるようになってきました。