21. なぜ地球温暖化による海面水位の上昇率が海域によって違うの?

約2万年前の最終氷河期には南極や北極域がとても厚い氷で覆われていて、地球全体の海面が現在より120mくらい低かったといわれています。現在では、人類活動による温室効果ガス(CO2など)排出によって地球温暖化がゆっくりと進行しており、北極海周辺(ロシアやカナダ)の永久凍土の融解や、南極の氷河の融解によって、海面の高さは全球で平均すると現状では1 年あたり2mmくらいのスピードで上昇していることがわかっています。これによってポリネシアの環礁国(ツバルなど)は国土が水没の危機にさらされているといわれています。観測技術や数値シミュレーション技術の発達により、20世紀後半における海面水位の上昇率の分布(下図)がわかってきました。これを見るとフィリピン近海では海面水位の上昇率が1年あたり6mmに達しています。太平洋、大西洋、インド洋における分布を比較してみると、いずれも大洋の西側で上昇率が高いことがわかります。これは黒潮などの海流が強くなったことを意味します。地球温暖化が進行すると、大気中の風の分布や水蒸気の移動の分布パターンも変化するので、海洋の応答にもこのような海域ごとの違いがでてきます。