50. 北極海に新しい「道」ができる?

北極域は地球でもっとも速く温暖化が進んでいる場所で(#48参照)、海をおおっている氷の量がだんだん少なくなっています。このために、北極海を通って大西洋と太平洋の間を船が行き来する「北極海航路」の利用が注目されています。その理由は、現在よく利用している南回りのスエズ運河航路にくらべて航行距離が3分の2くらいしかなく、時間と燃料の節約になるからです。この北極海航路はまだ夏の間しか通れませんが、いずれ1年中利用できるようになるかもしれません。また同時に、北極海でのエネルギーや鉱物資源の開発も活発になると予想されています。その一方で、このような人間の活動が北極海の生態系に悪影響をあたえると心配もされています。海洋汚染(#45参照)が北極海で急激に広がる可能性があるのです。北極海の生態系は、温暖化にともなう水温上昇・淡水化・酸性化などの環境ストレスを受けているので、これらの影響もちゃんと理解したうえで、人が北極海とどう関わっていくかを決めなくてはいけません。