● 海洋の研究ってどうやるの?

海洋の研究を行うには、海の状況を知る必要がありますので、多くの研究者は船に乗ります。今、私も船の上でこの原稿を書いています。船の上では、CTD(電気伝導度・水温・深度計)と呼ばれる測器で深さ方向の海水の水温や塩分を測定します。また、同時に他の項目を測定するセンサーで化学・生物などの情報も測定でき、日々新しいセンサーが開発されています。また、一緒にロゼットサンプラーと呼ばれる水を取る採水器を降ろし、望んだ複数の深さで水を取り、船の上に持ってきて、その水に含まれている小さな生物や化学物質を分析します。深い海ではこのセンサーや採水器の上げ下ろしだけで、何時間もかかることになります。どんな分析をするのかは、その人の専門によって違いますが、分析のために多量に水を取ったり、様々な分析機器を積み込むこともあります。岸近くの浅い海では、小さな船で水を採水器で取り、陸上の実験室まで持ち帰って分析することになります。また、生物の調査では、採水器で取れる生物量は限られますので、様々な大きさの網(ネット)を使って生物を取ることもあります。さらに、海底の生物や化学物質の研究のためには、海底の泥を取ることもあります。船は同じ場所にずっととどまっているわけにはいきませんので、係留計と呼ばれる装置で、水の流れを測定する流速計や他のセンサー類を設置し、何か月もデータを取ることもあります。最近は自動的に浮き沈みする装置が大量に投入され、世界各海域の海の中の情報がたくさん集められるようになってきていますし(#18参照)、自動的に決まった場所に行って戻ってくるような観測ロボットも開発されつつあります。また、直接海で観測するのではなく、人工衛星を使って様々なことがわかるようになっています。中には船酔いをするので船には乗りたくないが海の研究をしたいという人もいます。現在は、様々なデータを手に入れることができ、数値モデルと呼ばれる数式でコンピュータの中に海を再現する技術も進んでいますので自分では海に行かない研究者もたくさんいます。