31. 海に雪が降る?

海の中は、水深が深くなると太陽の光が届かなくなり、真っ暗になります。そんな場所に潜水艇で行ってライトをつけると、数センチメートルの白い塊がゆらゆらと沈んでいくのが見えます。その様子がまるで雪のようなので、研究者はこれを「マリンスノー」(海に降る雪)と呼んでいます。本当の雪は氷の結晶ですが、マリンスノーは動物プランクトンなどの海の生物の排泄物や死骸、陸から飛んできた土の粒などいろいろな小さな粒子がくっついて出来ています。その組成は場所によってバラバラですが、石灰質やガラス質の生物殻(#29参照)や鉱物などをたくさん含むとよく沈むことが知られています。このマリンスノーに含まれる有機物は他の生物のエサとして利用され、特に深海生物にとって貴重な栄養源になっています。また、この有機物はもともと表層水に溶け込んだCO2を材料にして植物プランクトンの光合成によって作られたものです。このため、マリンスノーは炭素を深海に運んで(#33参照)、海が大気のCO2を吸収することを促す働きがあります。