46. むかし海から酸素がなくなったことがあるの?

人と同じように海の動物も、生きていくのに酸素が必要です。そのため、一部の沿岸で貧酸素現象(#44参照)が起こると魚や貝などが窒息死してしまいます。しかし大昔の恐竜がいた時は、外洋のとても広い範囲で数十万年という長い期間、深層水の中の酸素がなくなってしまう「海洋無酸素事変」がくりかえし起こっていたことがわかっています。とくに約1億年前の白亜紀は活発な火山活動によってCO2が大量に放出され、今よりもずっと温暖化が進んでいました。その結果、海水が鉛直的にあまり循環せず、深い場所に酸素が運ばれなかったため、溶けていた酸素が生き物によって全部使われてしまったのです。そしてこのような大規模な海の酸素欠乏は、過去に数回、多くの生物を絶滅させたと考えられています。その一方で、無酸素状態のために死んだ生物たちの有機物は分解されずに海底に蓄積されて、黒い有機質の泥岩が作られました。実はこの時代にできた黒色泥岩から私たちは石油を採っているのです。そして今は、人が石油を利用してCO2を排出することで、それが地球温暖化の原因になっています。現代の海の環境は深層循環(#10参照)によって海底まで酸素が運ばれるため、深層でもたくさんの種類の生物が住んでいます。しかし近年になって海水中の酸素量が少しずつ減っているという観測結果が報告されていて、海全体の「貧酸素化」が懸念されています。