13. なぜ大洋の西側に強い海流があるの?(その2)

地球の自転の影響のかかり方が、北半球と南半球で違うのはなぜでしょうか?北半球のある場所(例えば日本)で1日中南向きに立っている人がいるとしましょう。太陽が東から昇り南の空を通り過ぎて西に沈むと、その人自身は「左回り」に回転したと解釈することができます。では今度は、南半球のある場所(例えばオーストラリア)で1日中北向きに立っている人がいるとしましょう。太陽が東から昇り北の空を通り過ぎて西に沈むと、その人自身は「右回り」に回転したと解釈することができます。このように北半球と南半球では地球の自転の感じ方が逆向きになります。地球上を巡る大気や海洋の流れの性質は、地球の自転の向きと重力が働く向きの関係によって決まります。地球の自転の感じ方が緯度毎にずれることによって、特殊な物理法則が働き、大気や海洋中のじょうらんは西向きに伝搬しようとするのです。

海面高度計を搭載した人工衛星が1990年代から本格的に運用されるようになり、世界全体の海面高度(10kmから100kmスケールの凹凸)の時間変化を観測できるようになりました。この観測結果を見ると海洋の擾乱が、5年から20年かけて西向きに伝搬していることが確認できます。このような海洋の表層循環の変動は大気の風によって駆動されながら10年以上かけて徐々に西側に寄せられます。その結果として強い海流が成立しています。