19. 魚の漁獲量から気候変動がわかる?

アメリカの太平洋岸ではアラスカ周辺とシアトル周辺という2つの海域でサケを捕ることができます。この漁獲量の数十年分の時系列を比較してみると、興味深いことに、アラスカ沖でサケがよく捕れる時にはシアトル沖で少なく、シアトル沖でサケがよく捕れる時にはアラスカ沖では少ないというシーソー構造になっています。サケの漁獲量だけでなく、海面水温の数十年分の時系列を解析してみると、アラスカ沖が温かい時にはシアトルの沖で冷たく、シアトル沖で冷たい時にはアラスカ沖で温かくなっていることがわかりました。これは北太平洋十年振動と呼ばれています。このようにサケの漁獲という私たちに身近な統計量を詳しく解析することによって、大気海洋結合系に特有の振動現象が着目されるようになりました。これによく似た例として、南アメリカ大陸の太平洋沿岸であるペルー沖のカタクチイワシの漁獲量の変動から熱帯太平洋におけるエルニーニョ/ラニーニャ現象が発見されました。