17. 人工衛星から海洋の何が測れるの?(その2)

つぎに(2)の説明ですが、人工衛星から海面に向けて電磁波(マイクロ波)を照射するとその反射信号を受信して解析することにより、海面高度(10kmから100kmスケールの凹凸)や海面散乱(10cmから100cmスケールの凹凸)の分布を測定することができます。海面高度を詳しく解析すると海洋表層の流れの構造がわかります。例えば九州・四国・紀伊半島・伊豆半島・房総半島の沖合を流れる黒潮は100kmくらいの幅をもちますが、黒潮の進行方向の右側の海面高度の方が左側の海面高度より1mくらい高くなっています。人工衛星から海面高度の分布を計測し、海流や海洋中の大きな渦の変動を監視する技術は1990年代中頃から実用化されています。一方、海面散乱を詳しく解析すると海上の風の強さを推定することができます。海上風や海面水温の観測結果は日々の天気予報に役立てられています。最後に(3)の説明となりますが、地球の重力の分布を測定することのできる人工衛星が2002年に打ち上げられ、海底から海面まで積算した海水の密度の変動を推定することができるようになってきました。(1)と(2)の技術では海面近くの情報しか測定することができませんでしたが、(3)の技術では海洋内部の情報が得られるようになりました。