33. 海洋の中で炭素はどう巡っているの?

地球温暖化の原因として大気CO2の増加が問題視されていますが、実は海の中には大気中の50倍のCO2が溶けています。そして大気と接する海表面で常にCO2を交換(吸ったり吐いたり)しているのです。合計すると、放出量よりも吸収量の方が大きいため、海全体としてはCO2を吸収して、大気中のCO2濃度を下げる働きがあります。もともとCO2は冷たい海水によく溶ける性質があるため、大気によって冷やされて重たくなった表層水はたくさんのCO2を溶解させて、中深層に沈み込みます。このような物理プロセスによって大気のCO2を海の内部に送り込むメカニズムのことを「溶解ポンプ」と呼びます。高緯度域における深層水の形成(#10参照)などに伴って、CO2が深い場所に運ばれているのです。その一方で、生物プロセスによってCO2を運ぶ「生物ポンプ」もあります。これはまず植物プランクトンが光合成を行い、表層水に溶け込んだCO2からデンプンなどの有機物を作ります。そして、この有機物がマリンスノーの沈降(#31参照)や生物の鉛直移動(#32参照)、あるいは海水の鉛直混合や拡散などによって深い場所に運ばれることで、CO2由来の炭素が海の内部に押し込まれるのです。これまで人間活動によって排出されたCO2の一部も海に吸収されてきましたが(#28参照)、今後もそれが続くかどうかは、溶解ポンプや生物ポンプの働きに大きく左右されます。