52. エルニーニョ現象とは?

熱帯の太平洋西部の海は地球上で最も暖かい海です。これは低緯度の地域に恒常的に吹く大規模な貿易風(偏東風)が暖かい赤道付近の海水を西に吹き寄せるからです。その海水を補うように太平洋の東部の海域や南アメリカのペルーやエクアドルの沿岸では、深い海から冷たい海水が湧き上がり、栄養に富む冷たい海となっています。このためプランクトンが多数発生し、それを食べる魚が集まって世界的にも豊かな漁場となっています。昔からこの海域では、毎年、クリスマスのころになると海の温度が上昇して魚がとれなくなります。この現象を地元の漁師は、幼い子イエス・キリストを意味する「エルニーニョ」と呼んでいました。いつもは春になるとまた海水温が低下してエルニーニョは終わります。しかし数年から十年ぐらいに一度この海水温上昇が異常に発達して1年以上も続くことがあります。これはペルー沖の局地的な現象ではなく、太平洋の熱帯域全体にわたる大規模なもので、「エルニーニョ」と区別して「エルニーニョ現象」と呼ばれるようになりました。何かのきっかけで赤道付近の偏東風が弱まると、エルニーニョ現象が発生することがわかっています。エルニーニョ現象が発生すると太平洋中央部付近からペルー沖にかけて海水温が平年より高くなります。その結果、西太平洋の活発な積乱雲群が東に移動します。これは地球全体の大気の動きを変えてしまうほど大きな影響を及ぼします。このためエルニーニョ現象は地球上のさまざまな地域に異常な気象を引き起こし、場合によっては大規模な災害をもたらすことがあります。日本の気候にも大きく影響し、エルニーニョ現象が発生すると夏の太平洋高気圧があまり発達せず冷夏になる傾向があります。逆に冬は暖冬になる傾向があります。エルニーニョ現象の反対の現象をラニーニャ現象と呼びますが、この場合は日本の夏はより暑くなり、冬はより寒くなる傾向になります。