60. コンピューターで天気を予測できる?

現在の状態がわかっていて、それがどのように変化するかがわかれば未来の状態を予測できます。大気の状態の変化をあらわす基本的な関係式には風についての運動方程式、気温と気圧について気体の状態方程式および熱力学の第一法則、そして全体の質量が保存される式があります。イギリスの気象学者ルイス・フライ・リチャードソンは1920年頃にこれらの式を用いて手計算で6時間後の予報を試みました。この計算にはなんと2か月もかかったそうですが、計算の際の処理に問題があったため失敗に終わりました。しかしながら彼は「64000人をホールに集めて指揮者の元で計算をおこなえば予報がおこなえる」と記しています。その後コンピューターが開発されたため、たくさんの人を集めなくてもコンピューターによる予測(数値予報)が可能となり、日本の気象庁では1959年より数値予報業務がおこなわれています。

天気には基本的な関係式だけではなく、雲や降水の発生、地面の摩擦の影響、そして海の影響など、たくさんかつ非常に複雑な関係があります。コンピューターで予測をおこなうには、これらのすべてについて関係式が必要です。これらは理論的に導かれたものと観測や実験などから経験的に構築されたものがあります。また、正しく天気を予測するためには現在の状態を正しく知る必要があります。陸上の地上気温、気圧、風などは比較的多くの観測がありますが、海上や上空はあまりありません。さらにコンピューターでは水平・垂直方向にある大きさをもった、さいの目単位で計算をおこなうため、それよりも小さい現象は、あいまいになります。このように現在コンピューターを用いて将来の天気を比較的精度よく予測することが可能ですが、まだ不確実な要素もあるため発展途上でもあります。