59. なぜ衛星や飛行機の観測が必要?
地球温暖化問題を考えてみると、二酸化炭素の排出源はいわゆる先進国に偏っている(最近では、中国や東南アジアからの排出も多いですが)はずですが、温暖化の影響は地球全体に及びます。温暖化を左右するものは温室効果ガスだけではなく、雲や大気のチリ(エアロゾル)や、温室効果ガスの吸収源となる森林や海洋などもあります。また、温室効果の影響は気温だけなく降水量や降水パターンにも変化をもたらします。そのような観点から地球全体を隈なく観測することは、現状を把握する上で非常に大切です。実際には、温室効果に対するそれぞれの寄与や相互作用についてもわかっていないことがたくさんあります。また、陸上だけの観測では地球全体を把握することは非常に難しいです。
これらのことから、人工衛星のように地球全体を観測できるツールが重要になってきています。人工衛星による観測の利点は、地球全体をカバーできるだけでなく、同じ測器で観測することにより、地域ごとの偏りのない観測もおこなえます。現在では、気象衛星「ひまわり」の他にも温室効果ガスを観測する「いぶき」や森林や海洋を総合的に観測する「しきさい」や海面水温や海上風、海氷を観測する「しずく」といった日本の衛星もあります。人工衛星の観測は、地球全体を見渡すのにはとても有効ですが、遠くから観測する分、詳細な情報が得られないという弱点もあります。また、地球の周りを周回する人工衛星では、タイムリーな観測ができないこともあります。人工衛星のように人の手の届かない地域を観測でき、かつ、タイムリーな観測ができるのは、飛行機です。航空機による観測は地上観測と衛星観測のギャップを埋めるものです。なおかつ、人の手の届かないところでの直接的な観測(例えば、雲やエアロゾルの収集)も可能です。特に、台風のように遠く海上で発生するものを的確に観測するには、航空機が最も有効です。